22歳の誕生日を、アルモドバルの5作目『マタドール』と共に迎えられることは、なんともセクシーな気分です。クエンティン・タランティーノの映画制作のきっかけになった、冒頭の血まみれの自慰シーンは必見。そして、ユニークなスタイルで現代社会を描く『ドリームズ』もお見逃しなく。『囚われ人』では、「ドン・キホーテ」の作者の同性愛的な側面が想像されています。また、女性監督が手がけた作品はありませんが、フェミニスト・ミュージカル『波』は今年のサウンドトラックになりそうです。
今年のラテンビート映画祭では、アルモドバル、アメナーバル、レリオというアカデミー賞受賞監督の作品が3本上映されます。さらに、アカデミー主演女優賞を受賞したジェシカ・チャステインの主演作もあります。
今回は小規模なラインナップではありますが、小さなパッケージにたくさんの魅力が詰まっています。ぜひ、お 楽しみください。
1575年、北アフリカでの戦争に従軍後、長期間の虜囚生活を送った若き日のミゲル・デ・セルバンテス=小説「ドン・キホーテ」の原作者を描いた歴史大作。28歳のミゲルは、スペインへの帰路でオスマン海賊に捕まり、アルジェの領主の捕虜となった。高額の身代金が支払われなければそこで死を待つのみとなる彼は、「物語を語る」ことで生きるチャンスを得ることになり……。ミゲルを演じるのはスペインの俳優兼歌手フリオ・ペーニャ・フェルナンデス。トロント映画祭で上映。
『父の秘密』(カンヌ国際映画祭・ある視点部門グランプリ)や『或る終焉』(カンヌ国際映画祭・脚本賞)、そしてヴェネチア国際映画祭銀獅子賞作『ニューオーダー』等で知られるメキシコ出身のミシェル・フランコ監督が、ピーター・サースガードにカンヌ国際映画祭男優賞をもたらした前作『あの歌を憶えている』に続いて、ジェシカ・チャステインを起用したベルリン映画祭上映作。アート界の支援者である女性とアメリカへの移住を画策するメキシコ人バレエダンサーの歪んだ恋愛を通して、移民の問題を投げかける意欲作。
ラテンビート映画祭でも数多くの作品が上映されてきたスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が、殺人でしかエクスタシー見出せなくなった男女の運命的な出会いを強烈な映像美で描いた初期の傑作。日本では『マタドール<闘牛士>・炎のレクイエム』のタイトルで1989年に公開され、“アルモドバル日本初公開作”となった。長らく日本で上映機会のなかった作品がデジタル復元版としてスクリーンによみがえる! メインキャストの1人としてブレイク前のアントニオ・バンデラスが出演。
『グロリアの青春』がベルリン国際映画祭女優賞を獲得したほか、2017年に『ナチュラルウーマン』でチリに初のアカデミー賞外国語映画賞をもたらしたセバスティアン・レリオ監督が手掛けるミュージカル映画。2018年、チリの大学に広がったフェミニズム運動を背景に、女子学生たちが長く耐え続けてきたハラスメントと虐待を告発するために声を上げる。虐待に抗う彼女たちの歌と踊りが、やがて分断された社会を揺さぶる力となっていくさまがパワフルに描かれる。主演のダニエラ・ロペスは1,200人を超えるオーディションを勝ち抜いた逸材。